第19回 マンションみらい価値研究所セミナー「賃貸仲介の現場からひも解く入居者ニーズ〜マンションの管理状況は大事な判断基準〜」

6月13日(木)、第19回となるオンラインセミナーが開催された。今回はゲストにアットホームラボ株式会社 執行役員の磐前淳子(いわさきじゅんこ)氏を迎え、「賃貸仲介の現場からひも解く入居者ニーズ〜マンションの管理状況は大事な判断基準〜」と題しお届けした。司会とナビゲートはマンションみらい価値研究所・所長の久保依子。終の棲家と思われている分譲マンションだが、将来的に売却や賃貸に出すことを想定すれば、物件としての資産価値の維持や向上は必須だ。そうした観点から、賃貸仲介の現場におけるマーケットニーズを解説してもらった。

<ゲストPROFILE>
磐前淳子氏
アットホームラボ株式会社 執行役員
データマーケティング部 部長

不動産情報サービス「アットホーム」に入社後、営業職・企画職に従事。2019年よりアットホームのAI開発・データ分析部門より独立した「アットホームラボ株式会社」の設立に伴い、現職に至る。不動産市場動向や業況の分析などを担当し、各種レポートの公表のほか、講演・執筆、メディア対応などを行う。

セミナーの冒頭で磐前氏は、不動産業界は長いコロナ禍の停滞期を抜け活気が戻っているとしたうえで、賃貸住宅の家賃の推移について解説した。

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『地場の不動産仲介業における景況感調査』(23年10月〜12月期)によると、コロナの感染が拡大した2020年は過去最低の落ち込みを見せるも、行動制限が緩和されると業況は回復傾向となり、2024年に入るとコロナ禍前を上回る水準となった。

顕著なのは東京23区の家賃高騰。今年頭から出足は好調で、いわゆる春の繁忙期はさらに好調感が増したという。特にファミリー向き物件が人気で品薄の状態となっており、実際にファミリー向き物件の家賃上昇は昨年の同じ時期に比べ5.8%、金額にして12,252円増加しているという(50㎡〜70㎡/221,940円 ※アットホーム調べ)。磐前氏によるとその主な理由は2つあり、一つ目は建築や維持管理にかかる諸費用の高騰、二つ目は分譲マンションの高騰による賃貸需要の増加とした。

さらに、コロナ禍のリモートワークにより都心を離れた人たちを含む、都心への人口流入の回復も賃貸需要を後押ししていると補足した。コロナの5類移行後はその動向が著しく、経済活動の本格再開で職住近接の思考が高まっているそうだ。


また磐前氏は「今年いっぱいは家賃の上昇が続く」と予想していると語る。その理由は「下がる要素が見当たらないから」とした。

では、価値のある住まいの価格とはどうやって決まるのか。磐前氏は、駅徒歩分数や築年数といった“当然の需要”もさることながら、自然災害が多発している昨今においては、洪水被害リスクの指針となるハザードマップも重要であるという。興味深いのは、古地図で立地を確認するのも有効であるということ。大切にされる寺社仏閣などがあるエリアは、地盤や高台などの条件から災害に強い可能性が高いとした。

これらの説明を受け当研究所所長の久保依子は、「賃貸全体の景気は良いが、すべての物件の価値が上がる訳ではない。消費者が何を欲しているのかを意識することが、マンションの資産価値向上につながるといえる」と語った。

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また磐前氏に対し「国土交通省による管理計画認定制度やマンション管理業協会によるマンション管理適正評価制度など、マンションの管理の状況を外部から見える化する試みが進められているが、こうした制度が資産価値に影響するのか」と問いかけると、「十分に影響する。アットホームグループでも消費者の方に対し、物件情報の中にそれらをわかりやすく表示することを心がけている」とした。

次回セミナーは7月25日(水)16:00から「住民主体のエリアマネジメント、戸建て住宅地から学ぶマンションのこれから」と題し配信を予定している。

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