孤立死対応マニュアル~社内資料をあえて公開~

高齢化社会
孤立死対応マニュアル~社内資料をあえて公開~

大和ライフネクストでは、2021年7月に管理員に向けてのアンケート調査を実施した。
アンケート調査の結果、何らかの形で孤立死の経験をしたことがある管理員は10%に及んだ。さらにフリー記入欄に書かれた孤立死の事例を読むと孤立死の対応には大きな精神的なショックを伴うことも明らかとなった。

管理員という職業は、大規模マンションでない限り、現地マンションに1名で勤務する。この点が他の多くの職業とは異なる。誰かに助けを求めたくても、仲間がすぐ隣にいるわけではない。電話で上司に確認することはできるが、電話をかける余裕がない時もあろう。1名で勤務しているという心細さがさらに精神的な負担を増加させているのかもしれない。
そこで、こうした負担を少しでも軽減するために、実際に孤立死に直面したときにどのように対応したらよいのか、また、日常的にどのような点に注意したらよいのかを社内向けにマニュアルとしてまとめた。

また、管理組合にとっても孤立死は他人事ではない。
孤立死が発生した後、親族や相続人に繋げることができるケースの他に、最近では親族が見つからない、相続人全員が相続放棄をしてしまうなどの事例もある。こうなると、管理組合が相続人調査をしたり、相続財産管理人制度を利用せざるを得なくなる。
法的な対応を行う場合には、管理組合から弁護士などの専門家に依頼することになる。しかし、専門家に依頼した後、どのような手続きを踏んでから次の区分所有者に住み継がれていくのか、管理組合はいつ、どの段階でどのような意思決定が必要なのか、そのフローを知っておくことも大切である。手続きを専門家に依頼することはできても、意思決定は管理組合がしなければならないのだ。

マンションに住む方の中には、「隣は何をする人ぞ」という希薄な人間関係を好んで居住している方もいる。しかし、今後は同じマンションの別の住戸で発生した孤立死に無関心ではいられなくなるだろう。孤立死が発生は管理費や積立金の滞納につながりやすい。相続人が不明なままの場合や相続人全員が相続放棄をした場合、総会の決議にも影響が出る可能性もある。顔も知らない隣人の問題が自分自身のマンション資産価値に影響を与える可能性があるのだ。

最近、区分所有法の改正が議論されている。従来の議決権数、区分所有者数の5分の4を必要とする建替え決議では、相続人不明や相続放棄の住戸の議決権が反対票となり前に進まない。こうした住戸を議決権総数の分母から除外することなどが改正点として検討されているようである。
区分所有法の改正はもちろん歓迎すべきことである。それでも法改正に頼るばかりではなく、マンション単位で孤立死の防止、親族などの連絡先の把握、関係機関との連携、早期発見などできることをやっておくことが必要であることに変わりはない。

とかく日本では、「死」にまつわる情報は、タブー視される傾向にある。このタブーこそが、孤立死の対応を遅らせている原因のひとつではないだろうか。
今回はこのタブーを破り、同様にマニュアルを作成したいと考えている企業や前向きにこの問題に取り組んでいる管理組合向けにあえてこれを公開する。
マニュアルと言っても「やらなればならない」対応をまとめたものではない。個人の一人ひとりの「気づき」に頼るところが大きく、また、人の死の記述に精神的負担を感じる者はマニュアルを読まなくてもいいとしている。マニュアルという名はついているが、その位置づけは世の中一般的なマニュアルとは異なる。

 孤立死は高齢化と共に今後も加速度的に増加していくだろう。このマニュアルを通し、マンション管理業に従事する者ばかりでなく、マンション管理に関わる方々に実際に起きていること、その対応方法について知っていただける一助となれば幸いである。


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このレポートの執筆者

「孤立死マニュアル」はマンションみらい価値研究所とプレシャスライフ相談室の協働で作成しています。 プレシャスライフ相談室は、介護や相続でお悩みの方の相談受付窓口です。

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