【緊急報告】能登半島地震 その時マンションでは何が起きたか。

防犯・防災
【緊急報告】能登半島地震 その時マンションでは何が起きたか。


この度の令和6年能登半島地震で被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げますとともに、皆様の安全と被災地の一日も早い復興をお祈り申し上げます。
 




 石川県、新潟県、富山県、福井県の北陸4県において当社が管理を受託するマンションは、いずれも金沢市など県庁所在地を中心とする都市部に位置しており、この度の能登半島地震で特に被害の大きかった市町村には存在していない。そのため、東日本大震災の時の仙台市や、阪神淡路大震災の時の神戸市での被害状況などとの比較に限って言えば、建物の躯体に関する被害は少ないようである。

地震発生以降の緊急コールセンターの受信状況

 石川県、富山県、福井県、新潟県における当社受託管理マンションは、56棟2,880戸である。これらのマンションから地震発生時(2024年1月1日16時)以降、2024年1月7日までの7日間、当社の緊急コールセンターにて受信した設備系の異常信号、お客様からの電話の状況は次の通りである(図1参照)。

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 なお、図1は、緊急コールセンターにて受信した件のみを集計したものである。当社の支店や管理事務室への直接のお問い合わせは含まれていない。

第1位 エレベーターの停止

 今回の地震では「エレベーターの停止」に関する受信が最も多かった。自動復旧の機能も兼ね備えたエレベーターもあるが、一般的に、エレベーターは地震を感知すると安全のため最寄階で停止するようにできている。つまり、地震発生後に停止するのはある意味、予定された反応なのである。なお、本震ではなく余震で停止することもある。
 地震でひとたびエレベーターが停止すると、復旧までに時間がかかることがある。地震による機械の損傷などがないかを確認し復旧作業を行うことができるのは、エレベーター点検会社の技術員しかいないからだ。
 また、エレベーターの復旧作業は、病院や駅、市役所などの公共施設が優先され、マンションにおける復旧はそれらの作業が終了してからになると言われている。さらには、技術員もそのエリアで居住していると、技術院もまた被災者であり業務を開始できないこともある。
 なかなか復旧しないエレベーターに不満が募り、居住者からは「いつから動き出すのか」「すぐに動かしてほしい」といったご質問やご要望をいただくこともあるが、このような背景もあり、すべてに応じることは難しい。
 なお、今回の地震でのエレベーターの復旧にかかった日数は下記の通りである(図2参照)おおむね2日~3日で復旧しているが、中には1週間以上かかっているケースもある。

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第2位 電気温水器の転倒による漏水事故

 エレベーターの次は「電気温水器」に関するお問い合わせである。「電気温水器」とは、割安な深夜電力を利用して沸かしたお湯をタンクに蓄えておく専有部分の設備である。最近の新築マンションではあまり見られない設備だが、筆者の感覚値では築20年程度のマンションでの導入が多いように思う。この電気温水器の設置があるマンションにおいて、タンクの転倒による漏水事故の発生が目立つ。
 北陸地方などの寒い地域においては、電気温水器や給湯器、蓄熱暖房機等の不具合は生活に大きな支障が出る。居住者からの「すぐになんとかして」というご要望は多いが、災害時には特に、対応までに時間がかかるのが現状だ。管理組合でも平常時から専有部分内にある機器類の転倒防止策を周知するなどの対応を検討してみてはどうだろうか。

第3位 駐車場の不具合

 「駐車場の不具合」では、機械式駐車場の作動不良に関わるものが多い。例えば、タワーパーキングや機械式駐車場の中でもパズル式の装置など、複雑な機構を持つ機械製品は、少しずれただけでも停止してしまう。こうした装置は、居住者が電源を入れて動かそうとするとパレットが落ちる危険性もある。パレットの落下は自動車が破損するという物損事故のほか人身事故にもつながりかねない。機械装置には触れずに、点検会社の技術員の到着を待ってほしい。

日を追うごとにお問い合わせの内容は変化

 地震発生から時間が経過するに伴い、当社に寄せられたお問い合わせの内容にも変化が見られる。図1の上位6項目について、2024年1月1日から2024年1月7日までの期間のお問い合わせ内容を調査した。(図3参照)
 「エレベーターの停止」についてのお問い合わせは、地震発生当日および翌日に集中しているが、日を追うごとにその他の設備系の不具合に関するお問い合わせも増加している。地震の発生が元日だったこともあり、外出していた居住者が帰宅してから不具合に気が付くということもあったのではないかと推測できる。さらに本震では被害を免れたものの、余震で被害が出た例もある。

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能登半島地震の教訓を防災訓練に生かす

 能登半島地震の報道を見て、あらためて防災訓練の見直しを考えている管理組合もあるだろう。日常の訓練はいざという時に役立つことは言うまでもない。
 さらに、居住者名簿の整備は、要支援者の把握だけでなく、親類を頼って外部に転居した区分所有者の避難先を把握するために役立つこともある。区分所有者に連絡かつかないとマンションの復旧工事にも影響が出かねない。居住者の意識が防災に向いているうちに、防災に関する施策を進めることをお勧めしたい。

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久保 依子
執筆者久保 依子

マンション管理士、防災士。株式会社リクルートコスモス(現株式会社コスモスイニシア)での新築マンション販売、不動産仲介業を経て、大和ライフネクストへ転籍。マンション事業本部事業推進部長として主にコンプライアンス部門を統括する傍ら、一般社団法人マンション管理業協会業務法制委員会委員を務める。

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