知識のコンパスを手に
みらいへの舵をとろう

日本の「社会インフラ」となったマンションに存在する様々な問題を調査・分析している当研究所。ここから情報や意見・考え方を社会に向けて発信し、 新たなマンションの価値創造に貢献します。

レポート

マンション管理に関する未発表データを分析し新しい視点から、マンションの価値を考えます
2024/11/07new

こんな規定もある!レアな使用細則 ~マスターキー使用細則、掲示板使用細則、拾得物取扱い細則など~

 今回は、調査した1,697組合の使用細則の中から、1組合または2組合でしか制定されていなかった使用細則を紹介しよう。いわゆる「レア」な使用細則だ。レアではあるが、内容を見ていくとマンションが置かれた状況が分かり、さまざまな「気づき」がある。また、ほかの使用細則への応用が考えられたりと、参考になるものは多い。1.マスターキー使用細則 マスターキーとは、その鍵が1本あれば、すべての施錠箇所を開けることができる鍵をいう。分譲マンションにおいては、共用部分をすべて開けることができるマスターキーが存在するマンションはある。しかし、専有部分をすべて開けることができるマスターキーはどのマンションにも存在しない。住戸のマスターキーがあるというのは、その鍵1本あれば、全部の住戸の玄関が開いてしまうということだ。防犯面を考えるとなんとも恐ろしい鍵である。 しかし、賃貸マンションでは、いわゆる大家さんや不動産会社が厳重に管理することを前提に住戸のマスターキーが存在する場合がある。 また、賃貸マンションをあとから分譲マンションとして販売するマンションもある。こうした場合、住戸のマスターキーが存在することになる。この取扱いは慎重にしなければならないことから、使用細則を定めている事例がある。マスターキー使用細則第1条       (趣 旨) この細則は、〇〇マンション管理規約第〇条(使用細則)の規定に基づき、管理組合が保管するマスターキーの使用について必要な事項を定める。第2条       (定 義) マスターキーとは、〇〇マンションの各専有部分の玄関ドアに設置される鍵を開錠することができるものをいう。第3条       (管理運用) 管理組合は、マスターキーについてプライバシー侵害を犯さないよう十分な注意を払わなければならない。 2. マスターキーについては、管理組合理事長が保管するものとする。第4条       (マスターキーの使用目的) マスターキーについては、次の目的に限り、使用できるものとする。 一       居住者の生命や財産に危険が及ぶか、及ぶ可能性のある場合 二       マンション全体に重大な影響を及ぼす可能性がある火災・事故等に関する確認を行う場合 三       犯罪等の発生により警察当局より要請があった場合 四       行政処分もしくは裁判判決等に基づく競売等により、行政・裁判所等より要請があった場合 五       その他、総会の決議による場合第5条       (マスターキーの使用制限) 前条第一号に定める場合のマスターキーの使用は、次の状況に限るものとする。 一       玄関ドアの開錠を行おうとする専有部分の区分所有者もしくは占有者と連絡がとれない場合 二       当該区分所有者もしくは占有者の親族等もしくは当該専有部分の管理の委託を受けた管理業者【以下、「区分所有者等」という】に連絡がとれたが、区分所有者等が特段の事情により対応が出来ない場合 2. 前項によりマスターキーを使用した場合は、使用後速やかに当該区分所有者に報告するものとする。第6条       (マスターキーの使用方法) マスターキーを使用する場合は以下の方法によるものとする。 一       マスターキーを使用する場合は管理組合役員(1名以上)による立会いを行うものとする 二       マスターキーを使用する場合に管理組合役員の立会いが出来ない場合、2名以上の立会いにより使用するものとする第7条       (疑義及び細則外事項) この細則の定めに疑義が生じたとき又は細則に定めのない事項については、理事会に諮り処理することができるものとする。第8条       (細則の改廃) この細則の変更又は廃止は、総会の決議を経なければならない。ただし、この細則の変更が規約の変更を必要とする事項であるときは、規約の変更を経なければ、することができない。 実際に管理組合が鍵を預かっている事例について、私は上記の事例のほかに見たことがないが、マンション標準管理規約のコメントでは、管理組合が専有部分の鍵を預かることについて「考えられる」と肯定的に言及している。マンション標準管理規約第23条(必要箇所への立入り) 第23条 前2条により管理を行う者は、管理を行うために必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができる。(中略) 4 前3項の規定にかかわらず、理事長は、災害、事故等が発生した場合であって、緊急に立ち入らないと共用部分等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは、専有部分又は専用使用部分に自ら立ち入り、又は委任した者に立ち入らせることができる。 5 立入りをした者は、速やかに立入りをした箇所を原状に復さなければならない。第23条関係 (第4項関係) コメント ② 第4項の規定の実効性を高めるため、管理組合が各住戸の合い鍵を預かっておくことを定めることも考えられるが、プライバシーの問題等があることから、各マンションの個別の事情を踏まえて検討する必要がある。 新築分譲マンションや築年数の浅いマンションでは、管理組合が鍵を保管するのではなく、警備会社による「鍵預かりサービス」を利用するのが一般的である。しかし、こうしたサービスには月額使用料がかかる。「鍵預かりサービス」を利用するのが難しい状況にあり、かつ高齢者が多く孤立死が問題となっているようなマンションでは、今後、管理組合が鍵を預かるような運用も考えなければならないのかもしれない。2.掲示板使用細則 どのマンションにも掲示板はあるだろう。しかし、掲示板の使用細則は見かけたことがない。掲示板は共用部分であり、居住者が勝手に何かを掲示することはできないと考えることが適当だ。たいていの場合、暗黙の了解で、理事長や理事会に許可をとり、その内容についても常識的な範囲で可、不可の別が決定されていると考えられる。こうした「暗黙の了解」で運営されがちな共用部分について、あえて文章にすることで判断基準がより明確になる。輪番制で理事長になった区分所有者にとっては、判断基準の明確化はたのもしい拠り所になるかもしれない。掲示板使用細則第1条       (使用許可基準) 掲示板を使用できる掲示物の許可基準は、次の通りとする。ただし、次に掲げる基準を満たしていなくても、管理組合理事会が掲示を許可すべきと判断したものについては特例により掲示を許可する場合がある。 ①       管理組合からの通知 ②       管理会社からの通知 ③       管理組合が利用している各種サービス提供業者からの通知 ④       管理組合が所属する自治会及びその関連組織からの通知 ⑤       市や警察署、消防署等の公共機関(公共や防災の目的であれば〇〇市水道局、〇○電力㈱、〇〇ガス㈱、NTT等も含む)から掲示を依頼された通知文書、ポスター等 ⑥       原則として居住者等が通学する公立学校の行事の通知 ⑦       居住者等の葬儀の通知 ⑧       居住者等の依頼で広くその親睦に役立つと思われる内容の通知 ⑨       居住者等が不要品を無償で第三者に譲り渡したい旨の通知 ⑩       幼稚園や保育園の営利を伴わない行事の通知のポスター等 ⑪       公共目的のコンサートや演劇のポスター等第2条       (使用申請) 掲示板の使用希望者は、指定の申請書に必要事項を記入の上、掲示物の原本と共に管理組合に使用の申請をしなければならない。 2. 申請は、管理室にて掲示開始希望日の1ヶ月前より受け付けるものとする。第3条       (使用許可) 掲示板の申請につき、申請の内容により、管理組合の理事長、又はその代理の理事が許可又は不許可の決定をするものとし、不許可の場合は申請者に対し、その通知をするものとする。 2. 使用を許可する場合でも、掲示物のサイズ、配色、記載内容等、申請内容の一部変更を求める場合がある。 3. 指定掲示板の使用を不許可とする例として、次のものを掲げる。 ①       企業等が大規模に行う販売会、展示即売会等に類する営利行為の通知 ②       企業等の求人を目的とする通知 ③       内職等の募集を目的とする通知 ④       私立の学校、幼稚園等の児童、生徒、学生或いは園児の募集を目的とする通知 ⑤       公的目的でないコンサート、映画、演劇等の通知 ⑥       宗教、政治、思想等に関する通知 ⑦       特定の居住者等に利害が生じる恐れのある通知 ⑧       不要品を第三者へ有償で譲渡を希望する旨の通知、又、有償無償を問わず譲り受けたい旨の通知 ⑨       掲示物の基準を満たしていても、掲示するに耐え難い内容の通知、又は公序良俗に反する内容の通知第4条       (使用期間) 掲示板の使用期間は、許可日(目安として申請日の3日後)の翌日を初日とし、原則として3ヶ月を限度とする。ただし、使用期間は、その内容及び目的等の事由により、延長を許可する場合がある。第5条       (使用料) 掲示板の使用料は、原則として無料とする。第6条       (容認事項) 掲示板以外の次の場所の全て又は一部に掲示することを許可する場合がある。 ①       建物内のエレベーターかご内 ②       当マンション内のガラス面及び壁面第7条       (使用規則の改廃) 本使用細則の改廃は、管理規約第〇条に定める総会において出席組合員の議決権の過半数で決するものとする。(附 則)第1条  本使用細則は、〇年〇月〇日の第〇期定期総会において承認された時点より効力を発するものとする。3.拾得物取扱い細則 拾得物の取扱いには、各種法令が絡んでいる。特に気を配らなくてはならないのが「現金」とそれに類するキャッシュカードなどだ。居住者は拾得物があると管理事務室に「これ、落ちていました」と持参してくることが多い。届出をした居住者はよいことをした、という気持ちになるだろう。 しかし、現金などの貴重品類については、管理員が預かることができないこともある。こうした場合に「お預かりできません」という一言が、善意の人を怒りに導くこともある。おおよそ、拾得物については管理会社が対応マニュアルを設け、管理員に対して対処方法をレクチャーしているケースが多い。この事例では、管理会社ではなく、管理組合が拾得物の取扱いについて規定している点が珍しい。拾得物取扱い細則第〇条 (拾得物) 拾得物に関して、下記事項を遵守して下さい。 (1) 現金、クレジットカード、貴金属、その他の貴重品は拾得者が直ちに警察署に届け出て下さい。 (2) 貴重品以外の拾得物は倉庫にて保管することとし、拾得物リストを掲示板に掲示して下さい。 (3) 貴重品以外の拾得物を確認・引取りをする場合、理事長もしくは管理人の立会いのもとで行って下さい。 (4) 貴重品以外の拾得物を拾得してから3ヶ月を経過したものについては、理事会承認後処分して下さい。4.ストーカー行為禁止細則 かなり特異な事例であるが、このマンションでは居住者の中に迷惑行為を繰り返す人がいたようである。単に迷惑行為を中止せよという要請をするだけでなく、警告をするために使用細則の制定をしている。 管理規約や使用細則の規定に違反している場合、たとえこの後に管理組合と区分所有者の間で訴訟になったとしても、管理組合側がきちんと迷惑行為に対処しようとしていたという履歴となると考えられる。本件はストーカー行為の事例となるが、特定の区分所有者の行動に問題がある場合、こうした使用細則を定めることも有効だろう。(禁止事項)第〇条 居住者は〇〇県迷惑防止条例第〇条(つきまとい行為等の禁止)に該当する行為を行ってはならない。該当した場合は、管理規約第〇条に基づき必要な措置をとることができる。 レアな使用細則であっても、それを制定するまでの間、理事会や総会での協議など、人と時間と手間をかけて審議が進められている。理事会の議事録などを紐解くと、理事会に寄せられた居住者からの意見や悲鳴にも近いクレームなどが赤裸々に記載されていることもある。解決のための理事会の苦悩もひとかたならぬものがある。 こうやって多くの協議を乗り越えてきた管理組合の結束は固いものになるだろう。
こんな規定もある!レアな使用細則 ~マスターキー使用細則、掲示板使用細則、拾得物取扱い細則など~
2024/10/31new

理事会や専門委員会の運営に関する使用細則~理事会傍聴細則、専門委員会細則、文書管理細則~

 理事会が管理組合の執行機関であることは言うまでもない。しかし、理事のなり手不足などの問題や居住者から寄せられるクレームへの対応など、理事会の悩みは尽きない。今回は、こうした理事会の葛藤が見え隠れする使用細則を紹介しよう。1.理事会の傍聴に関する使用細則 理事会運営細則を定めている管理組合は多い。ここで紹介するのは、役員ではない区分所有者が理事会を傍聴したい場合について定めた使用細則である。 区分所有者が理事会に参加しようとするなら、その都度、理事会にその旨を通知し、承認を受ける必要がある。例えば、特定の事項について理事会に審議してほしいと要望する区分所有者が、その理事会に出席することを希望した場合も、理事会に対して参加したい旨を通知する必要がある。 区分所有者の理事会への参加については、ポジティブな意思をもって参加する場合と、ネガティブな意思を持って参加する場合に二分される。 まず、ポジティブな意思というのは、例えば輪番制で来期の理事の候補となっており、今期の理事会の様子を見学したいと言う場合や、専門委員会の委員になっており、委員会が具申した内容を理事会がどのように審議しているかを確認しようとする場合などである。こうしたポジティブな参加の場合はあまり問題は生じない。 一方、ネガティブな意思をもって参加する区分所有者がいた場合、理事会との間で軋轢が生じることがある。例えば、なかなか解決しない特定の問題について理事会に対応を迫る区分所有者がいたとしよう。何度も繰り返される強硬な要望に、理事は心理的負担を感じることもあるだろう。また、理事長が許可していない不規則発言を繰り返すなど、区分所有者の傍聴が理事会の議事進行の妨げになる場合もある。 しかし、明確な規定がないと、理事会は区分所有者からの理事会の参加の要望を断りにくい。こうした場合に、区分所有者の理事会参加について使用細則を定めることも有効だろう。 下記の使用細則は、ネガティブな意思をもって理事会に参加する区分所有者の存在を発端として制定されたようである。理事会での発言は認めないなどの厳しい規定を置いている。傍聴しようとする区分所有者への情報公開の範囲などは、ポジティブな意思をもって参加する区分所有者に対して規定を置く場合にも参考になるだろう。理事会の傍聴に関する使用細則第1条      (目 的) 理事の会議(以下、理事会)の公正かつ円滑な運営、及び透明性の確保を目的に、理事会の傍聴に関し必要な事項を定める。第2条      (理事会の公開条件) 理事会は、理事会運営の透明性を確保するため、第3条第1項に定める非公開事項を除き、原則としてこれを公開するものとし、理事・監事以外の組合員の傍聴(以下「傍聴人」という)の参加を認めるものとする。第3条      (非公開事項) 理事会は、区分所有者の個人情報を保護し、公正な業者選定を行うなどの目的のため、次に定める場合は理事会を非公開とすることができる。 一      規約第〇条(管理費等の徴収)に定める管理費等に滞納がある区分所有者等の個人情報を含む事項を審議する場合 二      使用細則第〇条(専有部分及び専用使用部分の使用)に定める事項に違反するか、違反する可能性のある区分所有者または居住者の個人情報を含む事項を審議する場合 三      修繕工事、保険更新、設備品購入等、公募を含む見積価格、並びに業者選定を審議する場合2. 理事会で理事・監事に配布する資料(以下「理事会資料」という)は原則として傍聴人は閲覧することができない。また、複写は配布しない。3. 議長は、以下に定める事項に該当する場合、傍聴人の退席、あるいは傍聴人に指示を命じることができ、傍聴人はこれに従わなければならない。 一      前項第一号から第三号に定める事項を審議する場合 二      前項の他、区分所有者の個人情報に関わる事項を審議する場合 三      傍聴人が直接的、間接的に利害関係にある事項を審議する場合 四      傍聴人の不規則発言・拍手等、議事進行の妨げとなる行為があったとき 五      議長が正常に議事を進行する上で、傍聴人の同席が不適切と判断した場合第4条      (傍聴の申請・承認) 理事会の傍聴を希望する組合員、またはその組合員と同居する配偶者又は成人に達した一親等の親族は、様式〇による「理事会傍聴申請書」(以下、申請書)を理事会開催日の3日前までに理事会に提出し、理事長の承認を得なければならない。2. 理事長は、傍聴申請の承認または不承認を行う。第5条      (傍聴人の数) 公正かつ円滑な理事会運営に支障が出ない範囲において、理事会の許可した人数とする。第6条      (傍聴人の発言) 傍聴人は、理事会の議事中、発言することができない。第7条      (遵守事項) 傍聴人は次の事項を遵守しなければならない。 一      理事・監事と同等の守秘義務を負うこと。 二      傍聴人は、不規則発言(不規則発言に近い意見表明等も含む)や野次、拍手等、議事進行の妨げとなる行為や、討論・決議に対し公然となる可否を表明する行為をしてはならない。 三      理事会の録音、録画をしてはならない。 四      携帯電話は電源を切るか、着信音等が鳴らないようにしなければならない。 五      理事会で知り得た情報をもとにした意見募集等をしてはならない。第8条      (規定外事項) 本細則に定めのない事項については、規約又は総会の決議で定めるところによる。第9条      (細則の改廃) 本細則の変更又は廃止は、総会の普通決議を経なければならない。2.修繕委員会細則 マンションの専門委員会の中で最も設置が多いのが修繕委員会である。 委員会の設置にあたり、委員会細則を定めている管理組合は多い。規定の内容としては、概ね招集の方法、決議の方法、役員の役割などであり、マンション標準管理規約の理事会の規定を下敷きにしているようである。ここで紹介する修繕委員会には、専任委員のほかに理事会と兼務している委員がいる。理事会とは異なるメンバーのみで構成されるケースもあるが、この管理組合はメンバーを重複させることによって情報の共有を図ろうとしている。修繕委員会細則第1条      (総 則) この細則は、〇〇マンション管理組合規約第〇条の趣旨に基づき、理事会の下部組織として理事会を補佐し助言する諮問機関の必要事項を定めることを目的とする。第2条      (名 称) 諮問機関は、〇〇マンション管理組合修繕委員会(以下「修繕委員会」という。)と称する。第3条      (目 的) 修繕委員会は、マンションの維持管理上、都度発生する大規模修繕に際し、修繕に関する事項について調査・検討・協議し、工事の円滑な実施に向けて理事会を補佐するものとする。第4条      (組 織) 委員会は、管理組合の修繕委員(以下、「専任委員」という。)約〇名及び理事会役員(以下、「理事委員」という。)〇名で組織する。第5条      (役 員) 修繕委員会に次の役員を置くものとし、互選により選任する。 〇委員長   1名 〇副委員長  1名   原則として当該期の副理事長が任にあたるものとする。  またその選任については、当該期理事会の決定で変更することができる。 〇広報・書記担当委員    約〇名  原則として当該期の書記担当理事が任にあたるものとする。  またその選任については、当該期理事会の決定で変更することができる。 〇計画・技術・予算担当委員 約〇名第6条      (公 募) 修繕計画に基づき、必要とされる大規模修繕工事が予想された段階で、当該期の理事会は専任委員の公募を実施することができる。大規模修繕工事の規模や、想定期間により、理事会の判断で適時妥当な人員の公募を実施することができる。第7条      (任 期) 専任委員の任期は公募による選任後、当該期計画の大規模修繕工事施工が終了した時点(概ね1年を想定)とし、理事会と修繕委員会の協議により決定する。理事委員は管理規約に定める理事会役員任期に従うものとする。 2) 前項による理事委員の任期途中の交代は、理事会選出の理事が委員に就くものとし、任期を継承する。 3) 専任委員の管理規約第〇条第〇項に定める理事会選任は妨げないものとし、理事会理事、委員会委員を兼務する。 ただし、専任委員が理事長となる時は委員会の委員を辞任し、理事会選出の委員を補充するものとする。第8条      (修繕委員会) 修繕委員会は、委員長が必要の都度招集するものとする。 また必要な場合は、委員長の了解を得て理事長も招集できる。 2) 理事会への提言に関する議事の議決は、出席委員過半数の同意をもって決するものとする。第9条      (活動内容) 委員会は施設の維持管理を目的とする大規模修繕計画にかかわる次の事項を審議、実施し、理事会に活動をその都度報告、提言するものとする。 ①      総会で承認された工事予算内での修繕工事の仕様及び修繕箇所の決定。 ②      施設維持のための調査、点検及び補修箇所の指摘。 ③      計画実施に関する情報収集及び進捗等問題点の検討と対策。 ④      専門業者選定に関する理事会への助言。 ⑤      その他、理事会から諮問された上記に付随する事項及び管理組合員の要望に関するもの。第10条    (経 費) 修繕委員会の運営に必要な経費は、管理組合が負担するものとする。 ただし金額の多寡にかかわらず、事前に理事会へ通知し承認得ることとする。第11条    (附 則) この修繕委員会細則の改正は、総会の承認を必要とする。3.文書管理細則 マンションの管理事務室の多くは、十分な面積が取られていない。狭い場所に引渡し書類、毎年の決算資料、理事会資料や脚立や清掃用具、防犯カメラのモニターなど、あらゆる書類や備品が置かれる。年を追うごとに増加していく書類や備品に悩む管理組合は多い。 こうした状況を解消するために文書管理細則を設け、書類の保管期間を決め、期限が到来したら廃棄している事例もある。当社受託管理マンションのうち、1,697組合を調査した結果、文書管理細則を置いている管理組合は10.8%であった(図1参照)。 さらに、費用はかかるが、竣工図など永久的に必要な書類はスキャニングして電子化するなどの工夫も有効である。文書管理細則第1条      (目 的) この細則は、〇〇マンション管理規約(以下「規約」という。)第〇条に基づき文書の整理、保管および保存ならびに廃棄等(以下「文書管理」という。)に関して、必要な事項を定めるものとする。第2条      (定 義) この細則において、文書とは、管理組合の業務に係わる書類のうち、管理事務室で保管するものをいう。第3条      (保存制限) 保存制限とは、文書が廃棄されるまでの年限をいい、その基準は別に定める「管理事務室保管文書保存年限基準」による。 2. 保存年限の起算は、原則として文書の成立した日の属する会計期の翌期の初めから行うものとする。ただし、別に定める場合は、その定めに従うものとする。第4条      (廃 棄) 保存期間の満了した保存文書は、理事会の責任において廃棄する。 2. 文書の廃棄は、不正利用、秘密漏洩に十分に留意し、焼却または溶解もしくは裁断等の方法により行うものとする。第5条      (個人情報の管理) 組合員等の個人情報が記載されている入居届、転居届、その他各種届出書類については、施錠保管等の方法により厳重な管理を行うものとする。第6条      (細則の改廃等) この細則の変更又は廃止は、総会の決議を経なければならない。ただし、この細則の変更が規約の変更を必要とする事項であるときは、規約の変更を経なければすることができない。  理事のなり手不足が管理組合の課題になって久しい。理事の業務負担を減らすために、会議の開催に関する使用細則などを定め、その都度、理事会を開催して協議せずに済むようにすることも有効な手段だろう。
理事会や専門委員会の運営に関する使用細則~理事会傍聴細則、専門委員会細則、文書管理細則~
2024/10/23new

人間関係が見え隠れする使用細則 ~弔慰金規定、居住者名簿取扱い規定、資金管理規定など~

 管理規約には、国土交通省からマンション標準管理規約が示されているが、使用細則にはこうした標準型はない。ただし、マンション管理に関わるさまざまな団体から、使用細則事例集が出版されていることもあり、こうした関連団体の使用細則(ひな型)を参考に作成している管理組合も多い。 しかし、管理規約とは異なり、使用細則は共用部分の使用方法など個々の管理組合の事情が大きく関係してくるため、なかなかひな型通りにはいかない。事例集もすべてが網羅されているわけではなく、まったく白紙の状態から独自の使用細則を制定しなければならないこともある。※マンションが特定できる表記は変更または削除するなど一部編集を加えている※すべての関係団体の使用細則事例集は確認できていないため、管理組合オリジナルではなく関係団体の作成した使用細則が含まれている場合がある※あくまでも事例であり、すべてのマンションに推奨するものではない1.使用細則の作り方 使用細則には2種類の作り方がある。ひとつが「統合型」、もうひとつが「分冊型」である。 統合型は、使用細則という1冊の書面にまとめ、条文立てをして作成する方法である。分冊型は、統合型の各条にあたる内容をそれぞれ「〇〇使用細則」として独立させ、何種類もの使用細則を作成するものである。それぞれ、次のような形式となる。統合型の例下記のように、1冊の書面に条文を並べて制定する形式〇〇マンション使用細則本マンションの居住者は次の事項を遵守するものとする。 第1条 (禁止事項)  本マンションの禁止事項は次の通りとする。  一 廊下で大声で話をすること  二 共用部分でタバコを吸うこと(以下略) 第2条 (リフォーム工事)  リフォーム工事をする場合は次の事項を遵守すること。  一 あらかじめ理事長に必要事項を記載した届出書を提出すること  二 床材の変更を行う場合には、隣接住戸に通知を行うこと(以下略) 第3条 (防犯カメラの再生)  防犯カメラを再生する場合には、次の手続きを経るものとする。分冊型の例下記のように、各使用細則にタイトルが付され、多くの種類の細則を制定する形式〇〇マンションリフォーム工事使用細則 第1条 (目的)  本マンションの適正なリフォーム工事の実施のため、本細則を定めるものとする。 第2条 (届出事項)  リフォーム工事を希望する者は別紙様式を施工希望日の1か月前までに理事長に提出し、その承認を受けるものとする。 第3条 (承認または不承認)  届出をうけた理事長は、速やかに理事会を招集し、当該リフォーム工事の承認または不承認を審議するものとする。〇〇マンション防犯カメラ運用細則〇〇マンション集会室運用細則〇〇マンション理事会運営細則 20年ほど前から、マンションのトラブルが増加するにつれ、統合型では「どこに何が書いてあるか分かりにくい」「すべての規定が書ききれない」などの理由から分冊型が増え始め、現在の新築マンションの使用細則はほとんどが分冊型となっている。 以下、使用細則の具体例を紹介する。2.弔慰金規定 居住者間のコミュニティが形成できない、入居者名簿が集まらないなど、人間関係の希薄さが問題になっている一方、弔慰金規定や慶弔規定を制定している管理組合もある(図1参照)。使用細則を調査した1,697組合のうち、約5%にあたる81の管理組合でこの規定が置かれている。 弔慰金規定があるということは、居住者の中で誰が亡くなったのかを把握できているということであり、かつ管理組合役員の誰かは弔問に訪れているということでもある。いわゆる「濃い」人間関係のある管理組合であると想像される。弔慰金規定例(分冊型) 第1条 (目 的)  この細則は、〇〇マンション管理組合の区分所有者等に関して、弔事が生じた場合に弔慰金を贈り、弔意を表す事を目的とする。 第2条 (対 象)  前条による弔慰金等の対象者は、〇〇マンション管理組合の区分所有者及び現に居住する区分所有者の家族とする。 第3条 (通 知)  弔事が発生した場合、遺族等はその旨を管理組合に通知するものとする。 第4条 (弔慰金)  通知を受けた管理組合は、別記に示す品を理事長または理事長の指定する者、もしくは生前に親交のあった者に託すなどの方法により、霊前に供えて弔意を表すものとする。 第5条 (経 費)  この細則の弔慰金等に要する費用は、当年度の管理費会計の中から支出するものとする。 第6条 (その他)  この細則に定めのない事項の運用については、理事会で決定する。 第7条 (付 則)  この細則は、〇年〇月〇日から施行する。別 記 香典として  金10,000円弔慰金規定(統合型)第〇条  本マンションに居住する区分所有者および同居家族、賃借入居者および同居人家族の死亡に対し、一律、1万円を贈るものとする。2. その他で特別に弔慰金を贈る場合は、理事会で決定するものとする。3. 弔慰金は、一般会計(雑費)から支出する。3.居住者名簿取扱い規定 管理組合役員の方々から、「居住者名簿を提出してもらえない、どうしたらいいか」という質問を受けることがある。災害時の避難やその後の復旧工事などのために、居住者名簿が必要であることはいうまでもない。しかし、なかなか提出されないという悩みを持つ管理組合は多いようである。 名簿を提出する居住者の側に立って考えてみよう。例えば、女性のひとり暮らしの場合、近所の人にもひとり暮らしであることを知られたくないと思う人がいるかもしれない。また、管理事務室に入室したことのない人であれば、保管場所の状況を知りたいと思う人がいるかもしれない。そうした不安を払拭しないと、なかなか提出はしてもらえない。「災害時のために名簿の提出をお願いします」この一言だけでは名簿は集まりにくい。居住者の不安を払拭するためのひとつの手段として、また居住者名簿の不正利用防止の観点からも、居住者名簿取扱規定を設定することは有効だろう。居住者名簿運用細則(分冊型)第1条      (趣旨・目的) 〇〇マンション管理規約(以下、「規約」という)第〇条(使用細則)の規定に基づき、〇〇マンションの居住者の高齢化・独居化に伴う孤立死対策、大地震・火災・台風等の災害時の安否確認や理事会、災害対策本部への情報提供を迅速かつ的確に出来るようにすることを主目的にして、居住者名簿を作成し、その運用・保管に関し必要な事項を定める。第2条      (居住者名簿への記載事項) 居住者名簿に記載する事項は、別記様式「居住者届(兼変更届)に掲げるものとする。「居住者届(兼変更届)は4枚を複写し、それぞれ①管理組合、②管理会社、③閲覧用、④届出者控として保管する。第3条      (居住者名簿の作成および更新) 理事長は、規約第〇条(届出義務)の規定に基づき第2条に示す届出書を1冊のファイルに綴じることにより居住者名簿を作成するものとする。   2. 理事長は、前項により作成した居住者名簿の内容を更新する必要があると判断したときは、理事会の決議を経て、更新することができる。第4条      (居住者名簿の利用目的) 理事長は、第2条により作成した居住者名簿を次の各号に掲げる目的のために利用するものとし、他の目的に利用してはならない。 (1)     規約〇条(業務)に定める管理組合の業務 (2)     居住者の高齢化・孤立死対策、大地震・火災・台風等の災害時の安否確認や理事会、災害対策本部への情報提供 (3)     理事会の決議事項等を記した「理事会だより」の送付 (4)     規約〇条(業務の委託等)に定める管理組合業務の全部または一部をマンション管理業者に委託し、または請け負わせるとき、その「マンション管理業者」の業務上必要な情報提供 (5)     理事長が理事会の決議を経て行う地域の民生委員、自治会などへの情報提供第5条      (居住者名簿の管理及び保管) 前条で運用を定められた者は、居住者名簿の原本を管理事務室内の安全に保管できる場所に保管するものとする。   2. 居住者名簿に掲載された個人情報を知り得た者は、この細則に定められた事項を遵守するとともに、居住者の個人情報を漏らしてはならないものとする。   3. 居住者名簿は、機密保持および名簿の流出を防ぐために、その写しは作成せず、また、電子データ化も行わない。但し、第〇条(業務の委託等)の規定に基づき管理組合業務の全部または一部をマンション管理業者に委託し、または請け負わせる場合は、管理業者と締結する管理委託契約の範囲内で写しの作成および電子データ化を認めるものとする。第6条      (名簿の閲覧) 理事長は、区分所有者または利害関係人、若しくは警察等の捜査機関若しくは公的機関による法令等の規定に基づく理由を付した書面による閲覧請求があった場合は、居住者名簿を閲覧させることができる。ただし、正当な理由がある場合は、閲覧を拒否することができる。 2. 理事長は、前項に掲げるほか、災害等の発生および法令の定めがある場合にはその定めに従い、居住者名簿を閲覧させることが居住者の利益に資すると判断したときは、「居住者届(兼変更届)」③閲覧用を関係機関に閲覧させることができる。 3. 理事長は、前2項の閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。 4. 第1項の閲覧に供する居住者名簿の項目は、居住者の氏名および第3条「居住者届(兼変更届)」により居住者から届け出のあった連絡先のみを記載したもの(「居住者届(兼変更届)」③閲覧用)とする。 5. 第1項および第2項により居住者名簿を閲覧した者は、閲覧の目的以外にこれを利用してはならない。第7条      (規定外事項) この細則に定めのない事項については、規約または他の使用細則の定めるところによる。第8条      (細則の改廃) この細則の変更または廃止は、理事会の決議を経た後、総会の決議によるものとする。ただし、この細則の変更が規約の変更を必要とする事項であるときは、規約の変更を経なければ、行うことができない。4.資金運用、資金管理規定 管理組合の資産運用は、管理組合が収益事業を目的とした団体でないことからノーリスクが前提であるため、ローリターンであることが多い。定期預金や住宅金融支援機構のマンションすまい・る債などが主な資金運用先となっている。その都度、総会の決議により資金運用先を決めている管理組合が多い中、将来の金融不安に備えて使用細則で定めている例もある。 また、管理会社による管理組合の財産棄損については、マンション管理適正化法により重い行政処分が課され、国土交通省のホームページにて社名が公開される。一方で、管理会社による財産棄損ばかりでなく、管理組合役員による財産棄損事故が発生していることも事実である。 マンション管理に関わる専門家の方々から聞いた事例を紹介しよう。 ・資源ごみの回収に伴う協力金の支払いを受けるために、通帳と印鑑の両方を理事長が保管する口座が存在した。理事長が理事会に無断でその口座にかかるキャッシュカードを作り、資金を流用していた ・理事のひとりが管理組合が主催するイベントの準備のために必要な資金の仮払いと称して、管理会社に指示して別口座に管理組合資金の一部を振り込ませた。そのまま清算せずにマンションを売却、転居し、行方不明となった それぞれの事例については、どこかのタイミングで誰かが不正に気が付くことができたかもしれないが、他の役員や管理会社などの第三者の目に触れない、属人的な財産管理に陥っていたことが原因のひとつだと考えられる。こうした事故を防止するためにも、財産の管理方法について使用細則に定めておくことが有効だろう。資金運用細則(分冊型)第1条      (趣 旨) この細則は、〇〇マンション管理規約(以下「規約」という。)第〇条の修繕積立金の運用業務および管理費・使用料の運用業務の適正を確保するため、必要な事項を定めるものとする。第2条      (基本方針) 管理組合が次条に規定する資金を運用する場合は、当該資金が組合員共有の財産であることに鑑み、事業計画及び予算に基づいて執行することを旨とし、その運用に際しては元本の安全性を確保することを最優先するものとする。第3条      (管理組合資金) 管理組合が運用する資金は次のとおりとする。  (1)     規約第〇条に規定する管理費  (2)     規約第〇条に規定する修繕積立金(修繕積立一時金を含む)  (3)     規約第〇条に規定する使用料及び専用使用料第4条      (取引金融機関) 管理組合が取引できる金融機関等は次のとおりとする。  (1)     日本国内に本店を置く銀行  (2)     ゆうちょ銀行  (3)     住宅金融支援機構  2. 管理組合は、前項に規定する金融機関等と新たな取引を開始する場合、または前項以外の金融機関等と取引を開始する場合は、総会の決議を経なければならない。第5条      (金融商品) 管理組合が第3条の資金を運用できる金融商品の範囲は、次のとおりとする。  (1)     預金  (2)     郵便貯金  (3)     国債  (4)     住宅金融支援機構マンション修繕債券  (5)     その他元本保証が確実で、運用に関し理事会で承認されたもの  2. 前項の金融商品で資金を運用する場合は、理事会の承認を経なければならない。  3. 管理組合は、第1項に規定する金融商品以外の金融商品で資金を運用する場合は、総会の決議を経なければならない。第6条      (取引の停止又は解約) 管理組合は、前条に規定する金融商品であっても、元本の安全性に明らかな懸念が生じたと判断される場合は、理事会の決議を経て、取引の停止又は解約をすることができる。第7条      (通帳等の管理) 管理組合は、理事長及び会計担当理事を第3条に規定する資金の運用の管理責任者として指定するものとする。  2. 理事長は、金融機関等との取引印を保管する。  3. 会計担当理事は、金融商品に係る通帳若しくは証書又は証券等(以下「通帳等」という。)を保管する。ただし、理事会の決議を経て、第三者にその保管を委託することができる。第8条      (報 告) 理事長は、管理組合の取引金融機関及び金融商品種類及び残高に関する書類を保管し、組合員から閲覧の請求があったときは、正当な理由がある場合を除いて、これを拒んではならない。  2. 理事長は、第5条第2項及び第3項の規定により資金を運用したとき若しくは第6条の規定により銀行等を変更または解約したときは、速やかに、その旨を組合員に通知しなければならない。第9条      (細則外事項) この使用細則の定めに疑義が生じたとき、又は使用細則に定めのない事項については、管理規約第〇条によるものとする。第10条(細則の改廃) この細則の変更又は廃止は、総会の決議を経なければならない。ただし、この細則の変更が規約の変更を必要とする事項であるときは、規約の変更を経なければ、することができない。5.使用細則の効果 使用細則の制定は、管理組合の課題解決に役立つ手法のひとつだ。ルールを作るというだけでなく、そのルールを決議するまでのプロセスには、理事会決議、総会決議、それぞれの議案書の配付や議事録の配付などがある。それらの手続きを通じて、総会すなわちマンション住民の合意に基づいて決めた「守らなければならないこと」として認知され、問い合わせや事象が起こった際も使用細則に基づいて対応することができる。掲示板にお知らせを貼ることや、各戸に広報文を投函すること以上の効果があることは間違いない。 ただし、使用細則もまた「作って終わり」にならないよう、定期的な見直しが必要だ。 マンション標準管理規約は国が見直しを行い定期的に改正されることが契機となり、各管理組合が見直しをすることになる。しかし、使用細則にはその「契機」がない。管理規約の見直しと同時に使用細則を見直したり、〇年に一度とタイミングを決めて内容の確認をしたりなど、有名無実化しない工夫も必要だろう。
人間関係が見え隠れする使用細則 ~弔慰金規定、居住者名簿取扱い規定、資金管理規定など~
レポートへ

論文

マンション管理の現状や課題を調査・研究し役立つ論文を提供しています
令和4年度 国土交通省「マンション管理適正化・再生推進事業」 中古マンション市場価格に影響するマンション管理項目とその効果、分譲マンションの一生における中古取引価格の変動パターン及び要因に関する研究
2023/04/19

令和4年度 国土交通省「マンション管理適正化・再生推進事業」 中古マンション市場価格に影響するマンション管理項目とその効果、分譲マンションの一生における中古取引価格の変動パターン及び要因に関する研究

第1部 中古マンション市場価格に影響するマンション管理項目とその効果管理の質や修繕の実施状況が中古マンションの売買価格に与える影響についての調査分析概要管理に関わる数値化可能なデータを用いて市場価格への影響を説明すること、すなわち管理と市場評価を定量的に結びつけることは重要であると考えられる。つまり、ヘドニックアプローチは、モノの価格は機能や性質によって決定されるという概念に基づくものであり、そのアプローチにより中古分譲マンションの管理体制が市場価格などに与える影響について推定することを目的とする。本研究は全体にわたる変化に関して、特に、供給の側面に着目したものである。 そのために以下の5つの作業上のポイントを設けた。1)ヘドニックアプローチにより、中古分譲マンションの価格とその変化を目的変数として、これを説明するために各マンションのもつ属性、周辺環境そして各マンションの管理体制を説明変数として推定・評価することを第1の作業とする。各マンションのもつ属性、周辺環境、管理体制が直接的、もしくは相互および外部に作用することにより間接的に影響すると考えられ、これら説明変数の各々がどれほど取引に影響するかを推定した。2)管理体制からマンションの価格構造を推定し、かつ価格変化に着目した研究は既往論文のレヴューからは見られなかった。本研究では、重回帰分析による分析方法を利用してマンションの価格構造を推定することを第2の作業とする。マンション価格は近隣のマンション価格とマンション内外の環境が影響を与えると考えられるが、ここでは、価格構造に管理体制が与える影響を推定するため、中古取引価格を用いた。客観性のある不動産取引データにより、簡易に適正な管理費を算定に用いた。3)マンション中古価格はある価格帯の中で小刻みに上下に移動する。逆に下落するマンションもあり、これらは下落し続け市場から姿を消し負債のような扱いになることがあり、これを管理体制の適正化によって防ぐにはどうすれば良いかを考える。 これらとは別に、特に、上昇するマンションを探り示唆を得ようという試みも行った。マンションが市場に評価されている状態とは、すなわち取引価格が維持、もしくは上昇している状態を指すものを、適正状態とする。市場に評価されているマンションの管理体制の状態を定量的に示すことを第3の作業とした。取引を築年数と成約坪単価で散布図を作成すると図1のように負の相関が見られることがわかった。4)ここから地価の影響を取り除くことを第4の作業とする。Y=0になる点より下は不動産価格が地価を割り負債的扱いとなる。しかし、図1のようにあるマンションに着目すると価格上昇の傾向が見られ、このようなマンションでは重要な管理が行われているという理由から価格上昇している可能性がある。以上の仮説のもと価格を上昇させる要因について推定した。5)不動産市場全体に着目すると、図1のように取引時の築日数と成約価格をプロットすると点が雲のように分布する。こういった事柄を通じた価格変化を観察しようという試みを第5の作業とした。全体としては築年月を経るごとに価格が下がることが観察される。一方、個々の物件に着目すると、図1のように上位の価格帯に位置しかつ価格が上昇しているもの、図2のように中位の価格帯に位置しかつ価格変化も少ないもの、あるいは、図3のように下位の価格帯に位置しかつ価格変化の少ないものもある。このようにマンションの価格変化は様々なパターンがある。価格上昇の点から見ると、望ましいものは上位の価格帯に位置し続ける、もしくは価格が上昇しているものである。一方価格上昇の観点から見ると避けたいパターンは、竣工時には比較的上位に位置しながらも、 価格が下落しているものである。このようなマンションは維持管理が上手くなされず、 買い手から評価を受けられないと考えられる。さらに価格上昇の観点から見ると最も避けたいパターンは下位の価格帯に位置しながら、かつ価格が下落しているものである。 このようなマンションは市場から姿を消す可能性がある。もういちど不動産市場全体に着目し、築日数と中古制約価格グラフに着目すると中古価格に関して、歪な、下方硬直性がみられる。つまり雲の下位に分布が集中していているものの、より下位には急激に分布が少なくなるのである。ある価格帯に達すると、それより価格の低い取引が無くなり、もうこれ以下に下がらなくなったのである。この要因を見ると、マンション価格が地価と同等になったことによってその地価より下がらなくなった可能性がある。より深刻な場合としては地価相当分の価格をつけることもできず、取引が行われなくなったことが挙げられる。このような場合買い手からすれば当該マンションは負債とも捉えられるため、他に何か強いメリットが無ければ成約に至らないことは明らかである。個々のマンション価格については2つの異なる変化がみてとれる。1つはグラフ上で上下に微動する変化であり、もう1つは全期間にわたって移動する変化である。気温が日々変化しながらも春全体では上昇する現象に似ている。ひとつに中古マンションは個々の物件の一つ一つの取引に対して、需要と供給の市場原理が働くことが表れている。つまり売り手と買い手の背景にある事情や意思決定要因が微動を生じていると想起できる。もう1つの全体にわたる変化が重要でありこちらも需要と供給の両方が関係していると想像できる。購入者の需要の側面としては、土地価格が関係していると考えられる。つまりマンションの立地が相対的に人気が出たか無くなったかのどちらかである。供給の側面としては、ハードやソフトが関係していると考えられる。つまりマンションの建物自体が修繕などによって、相対的に、魅力的になったとか、逆に、問題が生じてマンション自体が買い手から避けられている可能性もある。第2部 中古マンション市場価格に影響するマンション管理項目とその効果Part21.研究目的 中古マンション市場の健全性を保つためには、価格の変動させる因子を特定することが必要である。本調査研究では、昨年度の埼玉県K市に引き続き、埼玉県S市を対象に、中古マンションの市場価格について、管理体制に関わる項目を変数として用い、モデル式を作成することで価格の変化に影響する変数の抽出とその効果の度合いを示すことを目的とする。2.研究方法 埼玉県S市における中古マンション(計45棟)を対象とし、「平均坪単価」「成約坪単価差」「傾き」の3つを分析時の目的変数・説明変数(以下記載)を選択し、重回帰分析を行った。さらに、昨年度の対象地である埼玉県K市も含め主成分分析を行い、比較を行った。3.まとめ●重回帰分析結果<モデル式①>平均坪単価(円/坪)=450012.046ー7779.506X1 + 261841.823X2 +2424321.293 X3[ここでX1=積立金未収金(円/坪・年)、X2=決議数毎年(件/年)、X3=排水管連続未実施率(%/年)とする]※昨年度同様の説明変数では、モデル式の決定係数が規定値未満であったため、排水管清掃実施率及び未実施率を変数に加えている。 <モデル式②>平均坪単価(円/坪)= 458529.247+15.711X1 + 2178200.532X2 ー7333.818 X3[ここでX1=修繕支出総額単価(円/坪・年)、X2=修繕支出総額の使用率、X3=積立金未収金単価(円/坪・年)とする]※モデル式①より、昨年度(埼玉県K市)同様、決議数が価格を上昇させる因子であったため、決議数をさらに分類し説明変数に加えている。 【解釈】 モデル式①を解釈すると、積立金未収金が専有面積1坪あたり、年間1円増えると、中古物件として売却時、専有面積1 坪あたり、約7,780 円程度価値を下げることを意味する。これは、昨年度のK 市の結果を補完するものである。将来もしくは現状の修繕」に対する不安から不動産価値を下げていると想定できる。また、決議数毎年については、昨年度同様プラスの影響が確認された。決議数が年間1 件増えると、売却時、専有面積1 坪あたり約261,800 円程度価値を上げることを意味する。決議数は、適正な管理組合であることを示す指標として捉えられていることが判断できる。排水管2 期連続未実施率が価格にプラスの影響を与えるという結果が確認された。これは、一般的に考えると、相反するように感じられるため、別物件でも調査が必要である。 モデル式②を解釈すると、修繕支出総額単価が1坪あたり、年間1円増えると、約15,700円価格が上昇することを意味する。また、同様に、修繕支出総額の使用率もプラスの効果を与えるものであった。モデル式①同様、積立金未収金はマイナスの効果が確認された。昨年度の研究では得られなかった結果(積立金未収金が不動産価格を下げる効果があること)が確認され、結果として補完されたと考えられる。 ●昨年度の研究対象地との比較管理に関する説明変数の特徴を掴むため、主成分分析を行った(図1)。結果を以下まとめる。【結果】①次期繰越積立金・修繕支出総額単価→将来への備えとして重要だと感じているが、関心が薄い。②積立金未収金単価→昨年度とは異なる結果でありエリアによる特徴が見受けられた。K市では、将来の備えとして位置していた。S市では現状に対する修繕への意識が強い。③修繕支出総額の使用率→昨年度と比較し、より間接関与に向かっているため、現状の改善と意識はあるものの関心のなさが見受けられる。④決議数→昨年度同様、将来への不安意識に分類される。⑤管理組合運営費単価→S市では、決議数同様、将来への不安意識に分類されるため、管理組合への出資は悪いこととは考えられていないことが読み取れる。第3部 分譲マンションの一生における中古取引価格の変動パターン及び要因に関する研究1. 研究目的 マンション管理の健全性を確保するためには、適正な積立金を徴収し、適宜改修工事を実施することは欠かせない。一方で、管理会社との打合せでは、区分所有者との会話で「大規模修繕工事実施後にマンションを売却することになったが、予想よりも高く買い手が付いた」というものがあると言う。今後の管理の適正化をはかるためには、大規模などの修繕工事と資産価値の関連について明らかにすることは、政策的にも市場的にも重要である。本研究は、マンション管理組合が、マンションの一生(建替え・終活・長期修繕計画等)を考える上で、判断材料となりえるもの(中古分譲マンションの修繕工事が市場価格及びその変化に与える影響について推定するもの)を提供することを目的とする。2.研究方法 本研究では、既往研究であるマンションみらい価値研究所が2021 年に公表している「築40 年を経過したマンションの修繕工事費の実績(事例研究)」のデータを追記し、不動産価格データ(1990年から2022年)との照合を行った。修繕支出額や修繕積立金残高などが、特徴的な動きを見せると、それが各マンションの成約価格にまで影響を与えるかどうか把握を行った。加えて、補足調査として、各物件において、当該物件の周辺環境などについて変化が生じているかをフロント担当者にヒアリングを実施した。【分析項目】1. 大規模修繕工事と不動産価格の関係性2. 大規模修繕工事間における不動産価格3. 代表的な事例比較(模式図)3.まとめ●大規模修繕工事と不動産価格の関係性 各事例に対する精査から、特に、大規模修繕工事は、不動産取引価格の下落傾向を抑える効果や上昇させる効果が複数の物件で確認される。大規模修繕工事の際に、不動産取引価格が上昇しないもしくはより下落傾向にあるマンションは、共通して資金ショートもしくは資金ショートに近い状態が確認される(報告書3部:44頁以降)。●大規模修繕工事間における不動産価格 大規模修繕工事を軸とし、不動産取引価格の推移の傾きに着目し分析を行ったところ、第1 回から第2回大規模修繕工事の間の価格変動と第2 回から第3 回大規模修繕工事の間の価格変動の間には違いが見受けられ、第3 回目大規模修繕工事以降もさらに異なる傾向が見受けられた。●代表的な事例比較(模式図) 大規模修繕工事の第1 回目と第2 回目については、取引価格の低下が見られるものの、第3 回目以降については、資産価値の維持もしくは上昇が見受けられる。これには、工事実施に伴う資金状況が大きく関連しており、借入があったり、改修工事後に資金状況が枯渇すると資産価値の下落が見られる。 修繕積立金の月額と資産価値に関してはプラス(ポジティブ)な相関が明らかになっていない。しかしながら、中長期的にみれば、資金の潤沢さと資産価値にプラス(ポジティブ)な価値があることが見られる。これは、政策的にも市場評価的にも、広め、啓発的に用いる価値のある結果であると考える。
続きを読むarrow-symbol
令和4年度 国土交通省「マンション管理適正化・再生推進事業」 共用部分の配管の取替えと専有部分の配管の取替えを同時に行う事例
2023/02/22

令和4年度 国土交通省「マンション管理適正化・再生推進事業」 共用部分の配管の取替えと専有部分の配管の取替えを同時に行う事例

研究概要 専有部分の配管工事を共用部分と一体化して実施する場合(以下「一体化工事」という)、の合意形成には、どのようなハードルがあるのだろうか。 当初の仮説として「修繕積立金を取り崩し、専有部分の工事費用に充当することは、専有部分の工事は区分所有者が行うこととしている区分所有法や管理規約の原則と異なる。」という点において反対意見が多く合意形成が困難になるのではないかと考えた。 一体化工事については、その是非について多くの論文が出されている。この点について議論するつもりはない。 法律論は別として、今回の調査の結果、確かに一部にこの「区分所有法や管理規約の原則と異なる」という意見はあるものの、最も問題となるのは、「先行して工事を行った区分所有者への補償」をどのようにするのかという点にあることがわかった。 多くの管理組合では、区分所有法をめぐる議論ではなく、「補償額をいくらにするのか」に多くの議論の時間が費やされている。 つまり、今後、一体化工事を実施しようとする管理組合があるなら、管理規約の改正よりも、補償金額の検討を充分に行う必要がある。 専有部分の配管工事を実施していない区分所有者からすれば、本来であれば自らが費用負担して実施しなければならない工事を管理組合が実施してくれるというのであるから、反対する理由は少ない。むしろ、有難い話であろう。何も総会の場で区分所有法や管理規約の記載を持ち出し反対する必要はない。また、先行して工事を行った区分所有者は、その補償金額について納得がいく金額の提示を求めたいであろう。 つまり、一体化工事の合意形成において越えなければならないハードルは、区分所有法や管理規約における負担区分ではなく、先行して工事を行った区分所有者への補償金額にあると言える。 一体化工事を検討した11事例から、合意形成に必要なプロセスを探る。
続きを読むarrow-symbol
論文へ

コラム

マンション管理について一緒に考えていくWEBマガジンです
コラムへ
Contact us

マンションみらい価値研究所・
セミナー等についてのお問い合わせはこちら