【世界のマンション~フランス編~】 話題の管理会社管理者方式がほとんど!?パリのマンション

1.パリに向かう
フランスは「管理会社管理者方式の国」なのだそうだ。
昨今、日本では管理会社が管理者になることについて、さまざまなご意見をいただいている。国土交通省も外部管理者方式ガイドラインを改定し、さらにマンション管理適正化法を改正して法制化しようとする動きもある。
こうした日本の動きとは裏腹に、フランスはもともと管理会社管理者方式だというのだ。パリ行きの飛行機は現地まで14時間のフライト。離陸してから数時間後に感じ始めた腰痛は増すばかりで寝ることもできず、ガイドブックを広げながらパリの街を想像した。
はじめに、私の極めて個人的なフランスとアメリカの印象を簡単に述べておこう。
アメリカは多くの日本人がそう思っているように「民主主義の国」である。何かモノゴトを決めようとするとき、1人の人間に権力を集中させるのではなく、できるだけ権力を分散させようとする文化だと思っている。例えば、企業においても、CEОは「最高経営責任者」と訳されているため、企業の全責任を負う者というイメージを持つ人もいるが、CEОが負うのは業績に関する責任だけである。財務に関する責任はCFОが負うなど、責任が分散するように組織を発展させている。
管理組合についても同様だ。アメリカは、理事会方式が主流である。区分所有者から選出された理事が全員で協議するスタイルが国民性に合っているのだろう。さらに、自分の意見を少しでも反映したいがために、理事になりたい人がたくさんいて困るとも聞く。
【世界のマンション~アメリカ編~】 理事になりたい人が殺到!? アメリカ ロサンゼルスのマンション
一方、フランスはどうか。昔、妹が愛読していた漫画「ベルサイユのばら」に影響されすぎているのかもしれないが、フランスは、ルイ14世やマリーアントワネットに代表される絶対君主制が長く続いていたことが想起される。さらに、フランスの自動車メーカーであるルノーから来日したカルロス・ゴーン氏 の経営手法は独裁者のイメージが強い。そんなことを考えると、フランスの管理組合は権力と責任を集中させる「管理者方式」が主流であるのも納得がいく。
区分所有法を国際比較の観点から研究されている先生方からはご批判はあるだろうが、あくまでも私の個人的なイメージであるからご容赦いただきたい。
腰痛が限界に達した頃、ようやくパリ・シャルルドゴール空港に到着した。1958年以来66年ぶりの11月の降雪に見舞われ、視察の日程は大幅に変更せざるを得なかった。雪で空路が混乱したこともあり、パリには予定より長く滞在することとなった。
2.パリのマンション
日本は地震などの天災による影響のほか、木造建築が多いことから火災が多く、さらには空襲などで街が戦火にさらされた時期さえある。観光地にある瀟洒なお城が実は明治や昭和の時代に鉄骨鉄筋コンクリートに建替えられ、外装部分だけが当時の面影を残すように化粧されている、ということも珍しくはない。一方、パリは石造建築が多く建築時の面影そのままだ。「実は、50年前に再建されています」などという話は聞くことがなく、数百年の歴史がそのまま現存している。

マンションについても同様である。スクラップ&ビルドという考え方はない。滞在中、あるパリのマンションを見学させていただいた。日本の銀座の一等地に建つヴィンテージマンションというところだろうか。誰もが知っている某有名女優も住んでいたことがあるそうだ。
このマンションでもエレベーターは後付けされたもので、物置だった場所をリフォームしてエレベーターを設置したという。
「エレベーターのないマンション!?」
日本ならマンション建替え円滑化法の要除却認定の対象だ。ましてや銀座の一等地ならすぐに建替えられて高級新築マンションとして販売されるに違いない。
さぞかし、考え抜かれた長期修繕計画があるのではないかと想像していたが、フランスの長期修繕計画は、積立金を徴収するための根拠表ではないという。さらに、10年程前までは「積立金」という概念すらなかったというから驚きだ。良い方向に解釈すれば、古いものは修繕して長く使うのは「当たり前」で、当たり前すぎてそれを言語化できなかったのかもしれない。
3.フランスの法制度
高校生の時に、フランス人学者モンテスキューの「法の精神」という書物が教科書に載っていた。世界史は苦手科目であったから、もちろん読んだことはない。それでも「フランスは法制度の国」という印象だけは残っている。
現地でのヒアリングのほか、書籍やインターネットから得られた情報で日本とフランスの区分所有法について比較してみた。区分所有法改正の頻度は日本よりはるかに多い。日本ではようやく区分所有法が改正されようとしているが、実に20年ぶりなのである。
2015年にフランスでは積立金は法制化された。区分所有法によって「積み立てなければならない」とされたそうだ。ただし、徴収金額は管理費の〇%という方法である。むしろ、その方が長期修繕計画上の工事費用が高いとか安いとかいう論争がないから、徴収しやすいのかもしれない。
積立金の概念がなかったと聞いた時は、内心「勝った!」と思ったが、法制化されたと聞き、一足飛びに抜かされてしまったような感じさえした。

4.フランスの管理会社
フランスには12,000社の管理者会社が存在するという。日本の分譲マンション管理会社はおおむね2,000社と言われている。しかし、管理会社管理者方式を行う日本の管理会社は45社にとどまる(※)。
※マンション管理業協会2023年9月調査による

フランスにおいて管理会社が業務を行うには、損害賠償責任保険に加入すること、破産した場合に区分所有物件の資金を保証できる十分な財務保証を有することなどの条件を満たす必要がある。日本の外部管理者方式は、管理会社に限らず、特段の届け出や規制は必要なく、誰でも受託できてしまう危うさが指摘されている。極端な話をすれば、マンションにはまったく関係ない「誰か」が「明日から管理者をやります」と言えば、営業できてしまうのである。管理者の資力に着目した規制があるのは、さすがに外部管理者方式先進国である。
管理会社と管理組合の関係は非常にドライである。契約は最大3年間、期間が終了すれば、他の管理会社に変更する。ウエットな人間関係や長期契約をよしとしがちな日本には合わないかもしれない。
5.パリ・・・ふたたび
海外視察はとかく、その国が日本よりはるかに素晴らしく映る。特にヨーロッパ視察は、日本人特有の欧米人に対して何となく感じる劣等感も相まって、一般的な評価以上に素晴らしく感じてしまっているのかもしれない。それでもパリの街並みは、あと20年後に私がふたたび訪れたとしても、そのままの姿で迎えてくれるに違いない。
参考文献
「マンション区分所有法制の国際比較」鎌野邦樹 編著 大成出版社 2022
「フランスにおける区分所有建物管理制度の概要,直面する課題と法改正1」寺尾 仁
日本不動産学会誌/第22巻第4号・2009.4
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大和ライフネクスト株式会社 執行役員。 主に東日本におけるマンション事業を統括。