知らないことだらけ! 給水管・給湯管の更新工事

設備・清掃改修工事
知らないことだらけ! 給水管・給湯管の更新工事

給水管・給湯管の工事費用は個人負担だった!

マンションの築年数が30年を迎える頃には、居室のフルリフォームを検討する方も多いのではないだろうか。フルリフォームとは、フローリングや壁紙、キッチンやお風呂などの一部の住宅設備だけではなく、共用部分にあたらない間仕切りの撤去により間取りも変えて全く違うお部屋に衣替えしてしまう、別名スケルトンリフォームのことである。
リフォームを検討するときには、目に見えている部分ばかりに気がいってしまうものだが、実は目に見えない給水管・給湯管の更新工事こそ重要なリフォーム工事であることをこのコラムを通じて知ってほしい。

給水管・給湯管は床下や床上の普段見えないところにある設備のため、どのくらい劣化しているか分からない。そのため、劣化に気付かずに漏水事故を起こしてしまったり、生活用水が使えなくなったりと、気付いたときにはもう遅い。そんな事例を多く見てきた。
知って欲しいのは、給水管・給湯管の更新工事は誰が負担すべきなのかということ。給水管・給湯管は専有部分にあたるため、部屋の所有者が費用を負担して行う工事になる。つまり個人負担となるこの高額な工事は、予め知識や情報を集めておかなければ痛い目に遭ってしまうかもしれない。

放っておくとこんなリスクが……

なぜ、漏水が起きるまで劣化に気付けないのか。それは前述のとおり給水管・給湯管は普段目に見える場所にないため、劣化状況が全く分からないためだ。また、一概にこれという前兆もないため、漏水が起きて初めて知る人が多い。では、放っておくとどうなってしまうのか。大きなリスクとして2つ確認しておきたい。

はじめに、漏水事故による賠償リスクである。これは誰にでも起こり得ること。多くの場合、専有部分の給水管・給湯管は床下に配管されているため、そこで漏水が発生した場合には、下階への水漏れとなる。どの場所で漏水が起きるかは分からないのだ。

事例として、高価な着物が濡れてしまいその被害を賠償することになったケースや、電子機器類が濡れて重要なデータを賠償することになったケースなどもあった。下階の損害が大きいほど、賠償する責任や金額も必然的に大きくなってしまう。他には、5階で漏水が起きて、4階、3階……と1階までの全4住戸が被害にあったという事例もある。この漏水事故の原因が自分の部屋だった場合、あなたがすべての責任を負うことになる。

次に、漏水事故が起きた後の生活リスクである。原因箇所にもよるが、例えば原因箇所がすぐに見つからない場合には、原因調査に長時間かかることもあり、その期間中は水の使用が制限されてしまう。原因が分からないとしても、水を使えば下階への水漏れは避けられないため、お風呂やトイレなどの生活していくうえで必要不可欠な生活用水を使用することができない。

調査により原因が判明した後も、その原因箇所を改修・復旧する工事が必要となり、完全な復旧までは生活を制限される可能性があるほか、それらにかかる費用はもちろん自己負担となるため、大きな損害となることは間違いないだろう。

検討までに必要な情報と工事実施までの流れ

では、どうすれば良いか。それは、被害を起こしてしまう前に給水管・給湯管の更新工事をする以外に方法はない。しかし、どんな工事内容でどれぐらいの費用がかかるのかイメージがしづらいだろう。まずは必要な情報を集めることがなにより大事になってくる。ここでは、工事実施までの流れに沿って、ポイントを説明していく。

はじめに、いつ頃工事を実施したらよいか確認するために、給水管調査診断の実施により劣化状況を把握することが必要と考える。劣化状況を正確に確認することで、「いつ」「どのような」工事を「いくら」で実施したら良いか、判断材料のひとつになる。一般的には専有部分の給水管・給湯管は30年で更新するのが望ましいといわれている。

各管理組合で長期修繕計画は異なると思うが、同じ30期頃に共用部分の給湯管の更新工事が計画されていることが多い。管理組合として給水管調査診断を実施する際に、全てでなくても良いので、例えば1割程度の専有部分配管も調査対象に含めることで、劣化状況を確認できる。

次に、専有部分の給水管・給湯管の更新工事の費用負担は誰がすべきか、ということである。冒頭では、個人負担であると述べたが、あくまで標準管理規約に則り考えた場合であり、管理組合が費用負担をして、マンション全体で更新工事を行った例もある。

埼玉県にある「つつじ野団地」では、663戸の専有部分も含めた給排水管改修工事を管理組合の負担でことが業界新聞などの記事で報告されている。管理組合として更新工事を行うことにより、実施している住戸・実施していない住戸の差がなく、漏水のリスクが全体で回避できるというメリットがある。

しかしながら、管理組合の費用負担で行う場合には、専有部分の工事を管理組合で行うことになるため、管理規約の改正や総会での決議は必須である。また、アンケートの実施や説明会を開催するなど、区分所有者の合意を得て検討を進めなければ、トラブルになりかねない。

管理組合の費用負担で行うためには、共用部分の工事費用として集められた修繕積立金を専有部分に使うことになるため、全体の合意を得るには時間がかかる。また、資金不足になり得る可能性がある。

デメリットとしては、予定していなかった工事のため、突発的に費用が発生するということである。そのため、管理組合として費用負担するのか、個人の費用負担とするのか、十分な検討が必要なのである。

今から検討しておこう!給水管・給湯管の更新工事

管理組合が給水管・給湯管更新工事の検討を行うとき、タイミングよくあなたの部屋をリフォームする時期になるかは分からない。ましてや、管理組合が費用を負担してくれるかも分からない。そして、いつ漏水が起きてあなたが加害者になるかは分からない。

マンションの修繕計画はどうなっているのか?部屋の給水管・給湯管はどのくらい劣化しているのか?あなたが加害者とならないためにも、そして何より安心して生活が送れるよう、給水管・給湯管工事の検討を始めてみよう。

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田中 優美
執筆者田中 優美

管理業務主任者。マンション管理業業界をより良くすることで、お客様の役に立ちたいという気持ちから大和ライフネクスト2014年入社。現在はフロント担当として、管理組合のサポート業務に従事。

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