ごみの夜間収集は良いことづくめ!?福岡市のごみ出し事情~マンションからの収集はどのように?~

東京から福岡市へ引っ越してはや1年半が経つのだが、私はごみ出しのルールにまず驚いた。
福岡市は政令指定都市で唯一、家庭ごみの夜間収集を行っている。家庭ごみは日没から夜12時までに出すルールとなっており、収集は深夜の時間帯に行われる。
マンションのごみ収集はどうしているか
戸建てやアパートの場合、基本的にはごみステーションのような共同集積所はなく、指定の袋に入れたごみを収集日の夜に玄関前に置いておけば、夜間に収集されて朝にはなくなっている。(戸別収集)
では、ごみ置き場のあるマンションの場合はどのようにしているか。
24時間いつでもごみ置き場へごみ出しができるマンションもあるが、可燃ごみは収集日当日のみごみ置き場に出せるといった運用のマンションも多い。
マンションのごみ置き場は収集業者にも分かりやすく4区画(可燃、不燃、びん・ペットボトル、資源)に分けておく。
通常、ごみ置き場は防犯上の理由から施錠してあるが、ごみ収集日の夜だけ開錠される。管理員の退勤時、または管理組合役員が当番制で夜に鍵を開錠しておく運用が一般的だ。深夜にごみ収集業者がごみ置き場前に収集車を停めて、すでに開錠されているごみ置き場の扉を開けて指定のごみ袋を収集してくれる。
収集業者がごみ置き場の扉を開けてごみ袋を取り出してくれる運用には驚いたが、おかげでマンション前の道にごみが溢れているといったことはない。

夜間収集のメリット/デメリットとは!?
当初不思議に思った夜間収集だが、調べてみると良いことづくめであった。
ごみを出す側としては、朝に焦らずごみを出せることや1日の終わりに家の全部のごみが出せてすっきりすることはメリットに感じた。それ以外にも以下のようなメリットがあり、市の調査では98%の市民が満足しているという結果も出ているそうだ。
<夜間収集のメリット>
- 都市美観に貢献する 朝~昼間にごみ袋がないため景観を損ねない。
- 交通渋滞を回避する 福岡市は車社会であり、特に通勤・通学の時間帯に渋滞が起こりやすいが、夜間収集の場合、渋滞に巻き込まれず効率的にごみ収集作業をすることが可能となる。
- カラスからの被害を回避する カラスの活動時間である明け方にごみがないため、荒らされる被害が少ない。
- 防犯・防災につながる 夜間パトロールの効果もあり、治安向上にも一役かっている。
一方で、個人的にデメリットは少ないと感じている。しいて言うなら下記のようなことだろうか。
<夜間収集のデメリット>
- 深夜に騒音が発生する
- ごみ収集車を目撃することが少ない
- 収集コストが高額になる
騒音に関しては、今まで3回ほど「ガラガラ」というごみ収集車の音で夜に起きたことがあるが、調べてみるとこれも対策がとられていることが分かった。全ての車両後方に集音マイクがあり、誘導の声を運転手に聞き取りやすくしていたり、バック時の音を鳴らさない対策をしているそうだ。
東京に住んでいたときは、幼児がうれしそうにごみ収集車に手を振っている光景をよく見たが、福岡市では資源ごみの収集車を稀に見かけるくらいで、基本的にごみ収集車を見かけることはあまりない。そうしたことも配慮してか、小学生を対象とした「ごみ収集ミッドナイトツアー」なる市のイベントがあり、YouTubeでも確認ができる。
その他のデメリットとして、深夜手当の人件費や収集コストが多くかかっているものの、市民からの満足度は高い。費用対効果はあると考えてよいだろう。
夜間収集の歴史
夜間収集はいつから始まったのだろうか。福岡市のホームページによると、明治~昭和初期にかけ、ごみが農家の肥料や家畜の飼料に利用されていたことから、民間の農業者などにより早朝にごみ取集を行っていたことが、夜間収集の前身とのことだ。
昭和32年(1957年)ごろから、馬車から三輪車に代わって交通渋滞回避のために効率的な夜間収集体制に移行した歴史がある。
市民の満足度の高い夜間収集だが、70年近く前から定着していたルールなので、他の都市で切り替え、取り入れるのはハードルが高いのかもしれない。

家庭ごみのこれから
歴史を紐解く中で、150年ほど前までは、家庭ごみでもただ捨てるだけでなく、農家や家畜に利用されていた時代があったことに驚いた。
生活するうえで「ごみ」は切っても切れない関係にある。
地球環境のためにごみを出さない工夫の第一歩として、何かを買う前・ごみを出す前に少し立ち止まり、責任ある行動をとりたいものだ。
明日、その先の将来のためにも、5Rである Refuse(リフューズ・不要なものを受け取らない)・ Reduce(リデュース・減らす)・ Repair(リペア・修理して長く使う) ・Reuse(リユース・繰り返し使う)・Recycle(リサイクル・再資源化する)を考えていきたい。

マンションみらい価値研究所研究員。管理現場にて管理組合担当業務を経験後、業績やコンプライアンスを管理サポートする部門に異動。マンションみらい価値研究所のコラムの執筆やWEBサイトなどの運営をしている。