利用者が急上昇!電動アシスト自転車に悩まされるマンション

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利用者が急上昇!電動アシスト自転車に悩まされるマンション

分譲マンションの駐輪場は今──

スーパーへの買い物や、通勤・通学で駅までの利用、また子どもを乗せて園への送り迎えなど、さまざまな用途で近距離の移動に便利な自転車。よって所有者も多く、ほとんどのマンションには共用部分として駐輪場が設置されています。しかし、収容台数よりも自転車が多い、駐輪スペースが狭い、放置自転車がある……など問題も数多く発生しているのも現状です。

駐輪場の運用は、マンションの資産価値にも影響するので、きちんとした体制を作り、マンション全体でルールを守っていきたいところです。

近年、多様化する自転車

シティサイクル(※いわゆるママチャリなど)はよく目にすることと思いますが、ほかにもマウンテンバイク、ロードバイク、クロスバイク、ファットバイクなどのスポーツ・趣味用の自転車や、子供用のペダルのないキックバイクなど、自転車の種類は多岐にわたります。

少ないスペースでより多くの台数を停めるために2段式ラックを使用しているマンションも多いですが、最近は自転車の種類や大きさもさまざまで、かえって駐輪しにくい状況になる場合があります。

例えば、一般的なシティサイクルの駐輪を想定した2段式ラックでは、メーカーによって異なりますが、おおよそ重量が上段25kg、下段30kgまで、タイヤ幅35mmを目安としています。タイヤが太く、重量のあるタイプの自転車は、規格外となりラックに納まらない場合も。タイヤの細いタイプは、ラックには乗るものの固定できず斜めになってしまいます。さまざまなタイプの自転車が混在することで、結果1台ごとの駐輪スペースが狭くなり、隣に置いてある自転車のハンドルや車体と接触してしまうなど、出し入れもしにくくなってしまいます。

増える電動アシスト自転車とその問題

最近では、電動アシスト付き自転車の中でも幼稚園・保育園の送り迎えに便利な子供乗せ電動アシスト付き自転車の利用が増えています。実際に自転車利用者の全体の17.6%、特に30代の子育て世代の約4人に1人が子供乗せ電動アシスト自転車を保有しているとの調査もあります(au損害保険株式会社 ~自転車利用者を対象とした、電動アシスト付自転車に関する調査~より)。

この子供乗せ電動アシスト自転車の駐輪に頭を悩ませているマンションも多いのではないでしょうか。あるマンションでは、2段式ラックの下に置いている自転車が、一回り大きい子供乗せ電動アシスト自転車に変わったことで、上段レーンが引っかかってしまい、上の段の自転車を下ろせなくなってしまう。また、ラック自体が電動アシスト自転車の重さに耐えられず破損するケースもあるようです。

かつてはシティサイクルが中心だった自転車も、今は多様化が進んでいます。これまでのような駐輪方法、全戸抽選や台数制限などの画一的なルールだけでは運営が成り立たないのかもしれません。

実体験、電動アシスト自転車

実は筆者も電動アシスト自転車ユーザーです。前と後ろに子どもを乗せられる3人乗り自転車を使用しています。最初の子どもが生まれた当初は、高額であることや保管に場所を取ることなどのデメリットを考慮し電動アシスト自転車を使うつもりはありませんでしたが、子どもが増えるごとに倍増する荷物、家から遠い保育園、思ったより距離のある習い事の送迎、小児科の通院など、徒歩だけでは対応しきれず、ついに電動アシスト自転車を導入することにしました。

いざ使ってみると、走行中は子供2人+荷物が乗っていても気にならないほどの軽さと安定感がありますが、問題は走行の前後です。段差や道路の傾きでバランスを崩してしまうと、車体を支えきれなくなってしまいます。車体の重さは30キロ前後(ブランドにより異なる)あり、幼児1人、乳児1人と荷物を載せると総重量は50キロを超えます。大人1人を支えるようなものなので、倒れないよういつも慎重に操作しています。

車体自体も大きいので、駐輪時はなるべく邪魔にならないよう、全体がまっすぐになるように停めたり、雨除けカバーなどがはみ出ないようにしたりと注意をしているのですが、重い車体ではなかなか位置の調整が難しく、駐輪にはいつも手こずります。ラックに車輪をうまく乗せられないこともよくあるので、後ろで待っている方がいると申し訳ない気持ちになります。

こういった大型自転車を停めるには、やはり平置きが一番。また大型車専用の駐輪スペースを設けることで、他の自転車との干渉も少なくなるのではないかと思います。

現在の駐輪スペースを整理することで調整ができれば良いのですが、マンションの空きスペースを新たに駐輪場とするなど、そのほかの可能性を検討してみるのも良いかもしれません。

ファミリータイプのマンションでは、子供乗せ電動アシスト自転車の利用が多くなると思いますが、お住まいのマンションの立地や世帯層によっては違った傾向が見えてくるかもしれません。マンション内でどのようなタイプの自転車が利用されているのかを調査し、ある程度分類できるようであれば、自転車のタイプによって保管方法を変える。自転車の使用頻度が少ない方が多いのであれば、管理組合でシェアサイクルの導入を検討してみるなど、実態に合わせた運用を模索してみてはいかがでしょうか。

また、マンションに住むみなさんの公平感を考慮し、お互いが気持ちよく利用できるよう、置く場所によって料金体系を変えるなどの工夫を検討してみるのも良いでしょう。

定期的に駐輪場運営の見直しを

インターネットで検索をすれば、駐輪場問題に対する具体的な解決策はいくつも出てきます。多くのマンションで駐輪場に関する何らかのルールが敷かれていると思いますが、設定時から年数が経過して、現状に合っていない状況になっているのではないでしょうか。

筆者のような子育て世帯の場合、これから先子どもが自転車に乗るようになれば、その分の駐輪スペースが必要になってきます。逆に、子どもが大きくなり独立する世帯が多くあれば駐輪台数が減り、マンション内での世代交代が進み、だんだんと居住者層が入れ替わっていくこともあるでしょう。つまり、今現在だけでなく、将来の想定もしながら定期的に、そして柔軟に見直していくことが必要です。

現状に合わせた改善を繰り返していくことで、日々利用する駐輪場が使いやすくなり、お住まいの方の満足度アップにもつながります。こうした取り組みを続け、魅力的な居住環境を作り出していくことは、将来的にマンションを次世代へ住みつないでいくためにも重要なことなのです。

池田 晴佳
執筆者池田 晴佳

マンションみらい価値研究所スタッフ。管理会社変更(リプレイス)の営業補助を経験後、リプレイスプロモーションを担当。現在はマンションみらい価値研究所のWEBサイトやセミナーを運営している。

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