先日公開したレポート「買主に管理情報が伝わらない理由 」では、紙やデータによる管理情報がなかなか伝わらない現状を明らかにした。 よって今回は、紙やデータによる情報が無い状態でも、ある程度の管理情報を確認できる方法をお伝えしよう。マンション購入を検討する際には、間取りや日当たりはもちろんであるが、今回紹介するポイントもマンションを内見する際にできる限りチェックして欲しい。 ※共用部の内見できる箇所はマンションによって異なります。あらかじめ仲介会社を経由して、管理組合・管理会社に許可を得てください
まずは、天気の悪い日、朝のラッシュ時間帯、マンションの違う顔を見てみよう 多くの購入希望者が、晴れた日の日曜日に1度だけ、現地を見ているのではないだろうか。おだやかな晴れの日の日中に見るマンションと、雨の日や夜の時間に見るマンションでは「顔」が違う。室内の確認は限られた日しかできないかもしれないが、外観はいつでも確認することができる。1日だけでなく、複数の日に駅からマンションまで歩いてみてほしい。 また、早朝の通勤時間帯の渋滞や駅の混雑状況なども確認したい。住みやすさとは、マンションという建物だけではなく、周辺環境もあわせて成立するものだからである。
法定点検の実施状況はここを見よ! ①エレベーター法定点検 マンションでは、法定点検が義務付けられている設備があり、その代表的な例はエレベーターと消防用設備である。エレベーターに乗ると、たいていのマンションは扉の上に、点検票が貼り付けてある。次回点検までの期間内であれば、エレベーターの法定点検が行われている状態であると判断できる。
エレベーター上部にある点検票 ②消防用設備点検
外観だけではマンションにあるすべての消防設備の点検状況はわからないが、消火器の点検状況はわかる。共用廊下などに消火器があれば、貼ってあるシールを見てみよう。消火器にも使用期限が定められており、消火器本体にその表示がされている。その期間内であれば、法定点検は行われていると考えられる。
管理会社はどんな会社か、調べてみよう ① 管理事務室の様子からわかること マンションの管理事務室の窓のあたりに、管理会社の連絡先が掲示してあるはずだ。緊急コールセンターを設置している管理会社の場合、24時間対応の緊急連絡先として電話番号の記載もある。緊急コールセンターを設置している管理会社であることは、安心材料のひとつになるだろう。 ② 管理会社の社名からわかること 上記①の掲示か、もしくは仲介会社から渡された図面などに管理会社の社名の記載がある。インターネット等で検索すると、その会社のホームページにたどり着くと思うが、それだけ見てもどのような管理会社なのかはよく分からない。 一般社団法人マンション管理業協会に参加している管理会社であれば、同協会のホームページから、該当する管理会社の管理戸数の推移、どこに支店があるのかなどの情報が得られる。他の管理会社の情報と比較するなどしてみるとよいだろう。
掲示板は情報の宝庫 集合郵便受けの周囲に掲示板が備えられているはずだ。掲示板を確認すると実にいろいろなことがわかる。 ① 掲示物の日付 2年前、3年前の掲示物がそのままになってないだろうか。理事会からのお知らせ、管理会社からの点検日程等のお知らせ、周辺の自治会だより等、マンション内には住民に告知したい情報があちこちから寄せられる。きちんと管理組合が機能していれば、何年も前の掲示物がそのままであることはない。古い掲示物が多いマンションは要注意だ。 ② 注意喚起や警告文 たいていのマンションでは、居住者のマナー違反によるトラブルが一定数存在している。そうした違反者に対しては、掲示版で注意喚起が行われることが多い。例えば、深夜の騒音に対する注意喚起、バルコニーで喫煙している住民に対する警告などである。掲示板を見ればマンション内でどんなトラブルがあるのかを把握することができる。 ③ 自治会だより 自治会だよりや地域の活動を紹介するようなチラシが掲示されているようであれば、自治会とのつながりがある管理組合だと推測できる。
ゴミ置き場も見てみよう マンションを見に行く前に、そのマンションのある行政のホームページから、ゴミの種類別の収集日を確認しておこう。曜日ごとの回収品目に合わせて整理された状態でゴミが出されていれば、マンションをきれいにしようという住民の意識も高いと考えられる。 また、指定日以外のゴミが散乱していたり、「ゴミはきちんと分別」「違反ゴミを持ち帰って」など必要以上に掲示が溢れていれば要注意だ。
ピンク色の袋に入れることが指定されている市にあるマンションのゴミ置き場 置き配などへの対応 購入を検討している住戸の階だけでなく、他の階の廊下も確認してみよう。最近では、置き配の対応をどうするのか、管理組合により対応が分かれている。具体的には次のような例だ。 ・宅配ボックスがあり共用廊下に荷物を置くことを禁止しているマンション ・ポーチがある、または廊下の幅が2m以上あり、一定のルールのもとに廊下に物を置いてもよいマンション ・共用廊下の幅が狭く、消防法に触れる恐れがあることから廊下に荷物を置くことを禁止しているマンション 一概にどれがよいとは言えないが、例えば、共用廊下を歩いていて、複数の住戸で乱雑に荷物が置かれている、何日も放置された荷物があるような場合は、置き配などへの対応をどうするのか、管理組合で充分に話し合われていないことも考えられる。
共用廊下、一見して何も置かれていないが、少し歩くと、アルコーブ内に生鮮食料品の宅配物が置かれているのがわかる。 このマンションはアルコープ内であれば置き配は許可されている。
住民の年齢層がわかる! 自転車置場 自転車置場に自転車が整然と置かれているかという観点で見るのはもちろん、自転車の種類や台数にも注目してみよう。子どもを乗せるためのチャイルドシートがついていたり、子ども用の自転車が多ければ、若い世帯が居住しているマンションであることがわかる。
子どもを乗せられる自転車と、子ども用の自転車が多い 天井部分に草木が……!? マンションの屋上を見れば、修繕工事の実施状況などがすぐにわかるが、なかなか屋上には上がれない。高所は危険個所として立入禁止となっているマンションがほとんどだ。それでも、ルーフバルコニーなどを見る機会があるのであれば、その状況を確認しておこう。住戸の屋根部分に草木が生えていると、その根が防水層を破って漏水に繋がることがある。大きく育ってから抜くと反対に防水層を傷めるため、早期の手入れが必要だ。大きく育った草木がないか、屋根部分に該当する箇所が確認できれば見ておこう。
ルーフバルコニーに育つ雑草、下階は住戸 住民に声をかけてみよう マンション内で誰かにすれ違ったら、積極的に何人かに「こんにちは」と声をかけてみよう。返事が返ってきたら、住民同士のコミュニケーションが取れているということだ。 マンションで生じているさまざまな課題は、最終的には住民間のコミュニケーションによって解決していくしかない。挨拶が返ってくるマンション、それがマンション選びの一番大切なポイントかもしれない。