マンション管理計画認定制度 管理規約の基準はハードルが低い?
「マンション管理計画認定制度」の認定をうけたい、そう考えている管理組合も多いだろう。
そうなると「管理規約はどうすれば?」「長期修繕計画は大丈夫か?」などさまざまな不安が頭をよぎるに違いない。そこで、認定基準をよくみてほしい。マンション標準管理規約に準拠しているかを確認する必要があるのは、たったの3カ所だけなのだから(表1参照)。
(表1)
確認が必要な3カ所のうち、第23条第4項の条文は平成28年のマンション標準管理規約改正において追加されている。この時、他にも多くの条文も改正がされており、例えば第19条2(暴力団等の排除)などがある。国が定める認定制度である以上、「マンション標準管理規約に全面的に準拠していること」という基準を設けてしまえば、全国一律にマンション標準管理規約に全文準拠しようとする動きに拍車がかかるに違いない。しかし、国はそれをせず、3カ所しか要求していないのだ。
数が減らされているワケ
おそらく最初に想像されるのは、地方公共団体における事務作業の軽減である。申請は、(公財)マンション管理センターから依頼をうけたマンション管理士により作成され、確認がされてから地方公共団体に提出される。地方公共団体においてマンション管理に精通した職員はそう多くはないだろう。専門家による事前確認があるにしても、最終的な認定は地方公共団体の業務となる。確認する項目数はできる限り少ないに越したことはない。
そこで、確認する管理規約の条文の数は、できる限り絞り込む必要があったのではないかと考えられる。数を減らす目的が事務作業の軽減であったとして、では、この3条文が最終的に残ったのはなぜなのだろうか。
第23条、第32条第六号、第64条が残ったワケ
まず、第23条は「管理不全」への対応に直結する条文であるからと考えられる。今回の適正化法の改正では、行政によるマンション管理への関与が色濃い。マンション管理計画認定制度が創設された一方で、管理不全に陥ったマンションに行政が指導、勧告ができることしている。
震災等の災害が発生しマンションに大きな損害が生じた場合、復旧も建替えもできず、危険な状態のまま放置され管理不全に陥る可能性もある。こうした場合には管理者等による専有部分の立入り調査ができるようにしておくことは必要な措置だ。
また、第32条第六号、第64条は、マンション管理計画認定制度の根幹そのものであると考えられる。この制度は、中古マンション市場において良好な管理が評価されることを目的のひとつとしている。管理情報の保管や、情報開示の規定がなければ、そもそも管理計画認定制度を申請することすらできない。
つまり、最終的に選択された3カ所は、制度の存在そのものに関わる条文のみなのである。認定制度をうけているからといって、管理規約全般がマンション標準管理規約に準拠しているといえるわけでもなく、管理規約に基づいた管理組合のガバナンスが形成されているといえるわけでもない。
マンション管理計画認定制度では、その他、長期修繕計画ガイドライン、修繕積立金ガイドラインに準拠していること等を求めている。これらのガイドラインへの準拠にはハードルが高いと感じる管理組合も多いだろう。修繕積立金の額などは「数字」であるから基準に準拠しているか否かは一目瞭然であり、ハードルが高くても事務作業が増加するわけでもない。
それと比較すると、マンション標準管理規約への準拠は3カ所と、ハードルはかなり低い。
それでもいいワケ
マンション標準管理規約は、管理規約をどのように作成してよいのか分からない管理組合の参考になる。しかし、区分所有者が自らの知識や経験をもとに管理規約を策定する力がある場合には、必ずしもマンション標準管理規約に準拠することが最善の方法とは限らない。例えば、コーポラティブ形式での建築や建替組合が建替え後のマンションの管理規約を検討する場合などが該当すると考えられる。区分所有法の範囲内で区分所有者による規約の策定ができるのであれば、マンション標準管理規約に縛られない管理規約であってもよいはずである。むしろ、そうした力のある管理組合の方がより高く評価されるべきではないだろうか。
マンション関係各認定制度において「最新のマンション標準管理規約に準拠すること」という認定項目にならなかったことは、区分所有者による最善の管理規約作成の道が残されているという点で歓迎すべきだろう。